かのビッグバンでこの宇宙が、時間が始まって、太陽から飛び出したたくさんの星の1つに海ができて生命が生まれ、いろいろあって僕らの祖先が粘土で素焼きしてなんか作ったやつ、それが縄文土器。
それからまたいろいろあって、かのトッド=マクファーレンが自分で描いたコミックをもとにフィギュアを作って発売したのがスポーン。1994年、平成6年のことだ。当時20歳の私は、無駄に精巧に作られたこの奇妙なオモチャを熱狂的に集めていた。オモチャは素晴らしい。特にその何の役にも立たないところが。毎週のように街中のオモチャ屋に通い詰め、何分の1かで混入しているというレアな品物を探しまわったものだ。スポーンのフィギュアはシリーズを重ねるごとに「リアルさ」に磨きがかかり、本当によくできた工芸品のようになっていった。
それと反比例するようにバイトで稼いだお金を全てつぎ込むほどだった私の中の熱は冷め、フィギュアの押し込まれた沢山の段ボール箱は、実家自室の限られた空間をまるでテトリスの長い棒を待っていて失敗した時のように占領し続けてきた。
時は降り、令和元年が終わろうする晩秋に、私はここ芸術館の様々なコレクションに出会い、ふと私の収集してきたモノたちのことを思い出したのだった。
(山本高之「展覧会によせて」)
今回の展示では、縄文土器、郷土人形など当館のコレクションと、アーティスト自身が所蔵する様々なコレクションとの対話、また本校の学生との対話を試みます。「コレクション」の個人性や普遍性、時代性や反復性が作家のユニークな眼差しの中で解きほぐされ、いわば発掘と異化の現場となるでしょう。
本展出品の「悪夢」を主題とした映像作品の制作および展示構成は、学芸員資格課程(博物館実習ID)を受講する学生の皆さんに協力いただきました。