この度、京都芸術大学 芸術館秋季特別展「推し世絵 〜ニッポン画×浮世絵プロジェクト〜」を開催いたします。 本展は、本学所蔵の豊原国周の浮世絵コレクションとニッポン画家・山本太郎による国周作品にインスパイアされた新作を展示、国周の役者絵を現代の「推し」文化と同質のものと捉え、浮世絵の持つ現代性を浮き彫りにすると同時に国周作品の魅力を再発見する試みです。さらに、浮世絵に対する理解を深めるため、多色刷り木版画の制作工程を見せるコーナーも設けます。 本展のキュレーションは本学教員であり独自の「ニッポン画」を提唱するアーティスト山本太郎。そして、2021年度山本太郎ウルトラプロジェクトの学生が企画と新作の制作を担当します。
「展覧会について」キュレーター山本太郎氏より
京都芸術大学の芸術館には豊原国周の浮世絵作品が合計で1,000点以上コレクションされている。豊原国周は幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師で数多くの役者絵を残している。本学のコレクションもその多くが役者絵である。 2021年春からスタートしたこのプロジェクトはニッポン画家の山本太郎とプロジェクトに参加した学生がこの国周の浮世絵コレクションをリサーチするところから始まった。 このリサーチの中で相当数の浮世絵の実作品を間近で見ることができた。初めて実物の浮世絵を見ることができた学生達の反応はとても新鮮だった。特に国周は明治に活躍してこともあり、作品の保存状態が良いものが多く、色が鮮やかに残っている。また、当時の職人の細やかな技術に驚いている学生も多かった。明治という時代性もあり、前時代的な感覚と現代に通じる感覚が一つの作品に内在されているものも多く、そのことは学生だけでなく私自身も刺激された。 浮世絵の役者絵はよく「現代で言うところのスターのブロマイドに似ている」などと言われたりするが、この展覧会ではその感覚をもう少し現代的に捉え直した。 自分の好きなアイドルやスター、キャラクターなどを尊ぶ「推し」文化と同質のものが役者絵の中にあると考えた。これはプロジェクトに参加する学生からでてきた感想で、役者絵の本質を見抜いた鋭い洞察だと思う。 「自分の推しを持つこと」と「誰かのファンであること」は同じことを表現したコインの表裏のように思えるが、実はこの二つの間には主客の逆転がある。 「誰かのファンであること」はアイドルやスターがあくまで主語となるが、「自分の推しを持つこと」はそれぞれのファンが主体となっている。 この「推し」という感じが浮世絵の役者絵にはピッタリである。自分たちが役者絵を買って応援することでその役者がより一層輝くことができるという構図は、現代の「推し」文化と同じ匂いがする。 この展覧会では「推し」という言葉と「浮世絵」をくっつけて「推し世絵」という造語を作り、その「推し世絵」をテーマとした展覧会を開催する 今回出品する山本の新作は国周が描いた役者絵を元に、令和の時代に活躍する歌舞伎役者をモデルに制作を行っている。